政策提案等の農政活動

 本県農業の現状や課題を踏まえた農地利用の最適化について行政機関等へ意見を提出するとともに、全国組織との連携のもと、政策提案や税制改正対策、組織対策などの要請活動に取り組んでいます。

県への政策提案の実施

県知事への意見書の提出

 埼玉県内の農業委員会や農業経営者の意見・要望等を踏まえ「農業委員会等に関する法律」第53条に基づき、令和7年度県農地等利用最適化の推進施策に関する意見書を取りまとめ、令和6年9月4日に埼玉県知事に提出しました。

令和7年度 県農地等利用最適化の推進施策に関する意見書
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意見書の提出(令和6年9月4日)

意見の内容

はじめに
現在、令和7年度を目標年とする『埼玉県農林水産業振興基本計画』や令和8年度を目標とする『埼玉県5か年計画』に基づき、県とともに関係機関・団体が一体となり、農業振興対策に全力で取り組んでいるところです。
そのような中、国民の関心が高まっている食料安全保障の確保や、農業の持続的発展のための生産性の向上、農村における地域社会維持等の課題への対応として、令和6年5月に食料・農業・農村基本法が改正されました。また、この基本法の改正に伴って、食料生産の礎となる農地に関しても、優良農地の確保や、農地の適正かつ効率的な利用の促進を目的とした関連法の改正が6月に行われたところです。
令和7年度は、基本法で掲げられた内容の施策としての実行や、改正された農地制度を適切に運用していく段階となります。また、各市町村で策定が進められている地域計画(地域農業経営基盤強化促進計画)についても、その計画を実現させるための取組が本格的に開始されることになります。
我々農業委員会組織は、「かけがえのない農地と担い手を守り、力強い農業をつくる架け橋」という組織理念のもと、農業委員・農地利用最適化推進委員を中心として地域の農業振興活動を行い、優良農地の確保、担い手への農地集積・集約化、遊休農地の発生防止・解消、新規参入者の育成確保などに一定の成果をあげて参りました。しかし、本県の農業を着実に振興し、農業者が真に望む農業振興を推進するためには、未だ多くの課題がある状況です。
この度、県内農業委員会や農業者の意見・要望を踏まえ「農業委員会等に関する法律」第53条に基づき、令和7年度県農地等利用最適化の推進施策に関する意見書を取りまとめましたので提出いたします。

1農業委員会系統組織の活動支援
(1)農業委員会が行う地域計画達成のための活動への支援の強化
令和7年度からは、地域計画の達成のための活動が農業委員会として重要な業務となる。特に、継続的な利用意向の把握と意向を踏まえたマッチング活動が必要となるとともに、農業委員や農地利用最適化推進委員が地権者や農地利用者に働きかける場合において、市町村区域外への移動等も想定される。そのため、このような活動に関する座談会、燃料費、郵送費、資料作成費などきめ細やかな支援を実施するように国に要請すること。
(2)地域計画等達成のための農業委員会事務局の体制強化支援
地域計画の達成のために農業委員会として、実際のマッチングなどをするためには、現場での活動のほか、農業委員会事務局が様々な情報を整理・分析し、資料の作成等を行う後方支援活動がより重要となり、その作業量も多くなることが想定される。そのため、農業委員会事務局職員の人件費(時間外手当を含む)の補填について、国に強く要請すること。
(3)遊休農地措置の簡素化
地域計画内において担う者が位置づけられている遊休農地については、農地中間管理機構が積極的に借り受けることが農地中間管理事業の推進に関する法律の基本要綱に規定されている。そのため、地域計画内の遊休農地への利用意向調査を行う必要性が低いため、対象地から外すように国に働きかけること。
(4)利用状況調査へのICTの活用推進
農業におけるスマート技術の導入が推進されている中、農地の利用状況調査についても、ドローン等の空中撮影を活用することで、短時間に広範囲の利用状況が把握できる手段となり、事務の効率化につながる。当該経費については機構集積支援事業で予算措置されているが、現状必要額に対し、満額で措置されていないことから必要額満額での予算措置について、国に要請すること。
(5)農業委員会サポートシステムの地図情報の更新支援
農業委員会サポートシステムの地図情報については、eMAFF地図が更新されないと地図更新がされない状況となっている。国における整備の実態は市町村からの地番図データの提供に頼っているのが現状である。このようなことを解消するために、地図の更新について、全国を数ブロックに分けて実施するなどの実施方針を示し、その更新のための地番図データの提供については、国から農業委員会ではなく市町村長等へ地番図データの提供の働きかけを行うことを強力に要請すること。
(6)農業委員会サポートシステムの支援活動への支援拡充
農業委員会サポートシステムの操作については、農業会議が操作支援を実施することとなっているが、人員が不足しているとともに、対応する内容が単純な操作ではなく、システムの入力規則、システムの互換性、プログラムの構築内容など専門的な相談もある。現在の国の事業において、システム業者と提携し、派遣する予算はあるが、提携対象業者がサポートシステムの管理業者ではなく、他社のシステムのため、対応できないとの回答がされている。そのため、システム操作のサポート体制の強化について、国に要請するとともに、行政としても支援できるようシステムの理解促進に向けた体制を構築すること。
(7)農業委員会ネットワーク業務の実施に関する支援の充実
農業委員会ネットワーク業務に関する活動経費を国が助成することと法律で規定されているが、農業経営を営み、又は営もうとする者に対する関係農業委員会の紹介その他の支援を行うことに関する業務、法人化の支援その他農業経営の合理化のために必要な支援を行うことの業務などについては、支援予算が措置されていない。特に、新規就農希望者への相談対応については、県・農林公社からの要請に対応し、新農業人フェア・相談会の対応を行っているほか、法人化等に関する市町村、農業委員会、県農林振興センター、一般からの相談についても対応している。そこで、このような活動に関しての助成措置を国に要請するなどの支援を行うこと。
(8)農業委員会ネットワーク機構の体制強化のための支援強化
埼玉県農業委員会ネットワーク機構に位置づけられた法定業務が拡充されており、また、農業委員会への支援として法制度の適正な運用や農地利用最適化業務の活動展開方法のための研修等の予算は必要額の補助がされないなどの予算措置の不十分な状況となっている。また、業務の電子化などを行っていくための整備予算も必要になってきている。他方、農業委員会や農業委員会のない市からの問い合わせ、特に、権限移譲市からの農地制度に関する相談業務も増加し、県業務の肩代わりも行っているのが現状としてある。このような状況のため国に対して機構集積支援事業の農業委員会活動の活性化に農業会議が必要とする予算措置の満額支援を強く要請するとともに、県としても農業会議の運営に関する予算措置について検討を行うこと。
2 農地確保と有効利用について
(1)地域計画の達成のための支援の実施
令和7年度は、地域計画の実現のための活動を展開する初年度となる。この初年度において、作成された地域計画のフォローアップの体制を構築することが今後の農業振興には必要不可欠となるため、制度上に位置づけられた5年に1度の見直しだけでなく、県として地域計画の達成に向けた市町村の取組に対し、引き続き支援するとともに、県農業経営・就農支援センターの機能をフル活用して、地域の農業を担う者への経営改善のための支援を強化すること。
(2)農地中間管理事業の適正実施のための支援
法改正により、農地中間管理事業を活用した農地集積・集約化がこれまで以上に重要となる。そのため、事業実施上の課題や利用者だけでなく、利用していない者の意見なども積極的に収集し、内容について分析・検討し、農業者が利用しやすく、市町村・農業委員会の事務負担が増加しないような農地中間管理事業の制度とするよう国に要請すること。
(3)農地集積集約化のための支援
農地の集積・集約化を進めるためには、農地中間管理事業が重要となる。地域計画内の農地については、遊休農地や所有者不明農地を含め、積極的に中間管理機構が借り受け、担い手の集約化に資するように務めること。
(4)農地管理を踏まえた集約化の推進
基盤整備事業により畦畔除去等を実施する際に、境界の座標データ作成についても実施し、地権者が安心して貸借できるような団地化を実施できるよう国に要請すること。
(5)農地中間管理機能の推進と支援強化
農地の遊休化を防止するために、農地を有効活用する農地中間管理権の設定は有効な手段となるため、農地中間管理事業を行うための経費助成の充実を国に要請すること。
(6)農地利用の適正化のための法制度執行への支援
農地法第3条の許可要件の緩和により、例えば転用される話し合いがすでにされているが公的な事務処理がされていない土地を対象とするような農地転用目的・資産保有目的などの権利取得の相談や申請が出てきている。しかし、現行における申請書・添付書類の内容のみでは、その申請内容が適正であるか判断が難しい。そこで、農地法第3条の審査に当たって、要件確認を容易に判断できるように申請書や法定添付書類の見直しと判断基準の明確化を国に要請すること。
(7)遊休農地の解消支援
遊休農地を利用するためには、農地として再生する必要がある。現在、農地中間管理機構が行う解消に関しては助成措置が講じられているが、解消経費の上限が43,000円/10aと低額となっており、作業内容によっては、地元負担が生じるなど、解消が進んでいない。そのため、解消経費の上限額の増額を国に要請すること。
(8)農地の有効利用のための農地改良の適正な実施
盛土対策の本格施行にあわせ、農業経営の改善のために行われる農地改良に関しても、適切に農地改良が行われるように措置すること。
(9)担い手が行う基盤整備の推進
農地の集積・集約化を加速的に進めるためには、公的に実施する広範囲の基盤整備事業の実施のみでは間に合わない。むしろ農地中間管理事業等により集約された農地について、それを利用する農業者が畦畔除去や均平作業、水路の整備を自発的に行うことで効率的な農地を整備していることも多々ある。そこで、地権者を含めた農業者等自ら実施する整備について、農地所有者も含め農業者等複数人が受益者となる場合に、一定の助成措置を行うように国に要請するとともに、他者の利用する農地整備についても農業者が請け負う体制が整えば、新たな収入となり得ることから、基盤整備等のための機械導入に対する助成措置についても国に要請すること。
(10)農地の集約化に対応した営農環境の整備
農地の耕作を行うためには、農地自体とその周辺環境の整備が重要となる。特に、今後、農地の集約化をした場合に、接道の道路幅が狭いと大型機械が搬入できないため、必要な営農環境整備を推進すること。
3 担い手の経営安定・発展支援
(1)農業経営の安定的な発展
集積・集約を行うことにより、大規模化を推進している状況の中、農業経営体の安定的な発展のためには、これまで以上に雇用環境の整備が重要となる。そのため、経営者や管理者が就労に係る給与やそれにともない社会保険制度、税金の取り扱い、各種手続きなど経営体として必ず知っていなければいけない知識をしっかり認識してもらうための支援を充実強化させること。
(2)経営の合理化のための農業サービス事業体の周知
農業経営の合理化のためにはアウトソーシングも必要となる。国においては農業支援サービス事業体の実施内容が公表されている。今後、埼玉県を活動対象とする事業体を増やしていくことが合理化のためには必要となる。そこで、農業者側からはこのようなサービスがあれば利用したい等のニーズを把握し、そのような情報を中小企業や金融機関に周知して新たな農業支援サービス事業体の掘り起こしや国の公表ページへの登録や農業者へ活用方法の周知などの推進を行うこと。
(3)農地の集積・集約化に対応した農業機械の導入支援
地域計画の受け手に位置付けれた農業者については、今後調整するとされた農地についても引き受けを行う場合も想定され、加速度的な規模拡大が進むことが想定される。このような場合に、現状の機械・装置では生産効率が下がり、規模にあった機械装置を新たに導入する必要性も生じる。そのような経営体に対して、地域計画の達成のための支援として、機械・装置についての助成を行うように国に要請するとともに、県としても上乗せ助成を行うなどの支援を検討するとともに、その財源について国に要請すること。
(4)新たな販路確保のための支援
県内農産物を消費地とつなげるためには、流通コストの削減と新たな販売チャンネルを構築することが必要となるため、販売支援を強化すること。
(5)県産農産物の流通のための支援
経営発展、販売網の構築を行うためには、作目・地域などを飛び越え、連携し、埼玉県産農産物の提供を行う体制を構築することが必要となる。そのため経営体同士が連携した販売や新たな加工品などの開発やそれと連携する食品関連業者との橋渡しを行う支援を強化すること。
(6)スマート農業の普及推進
スマート農業技術活用促進法の成立により、様々な施策の展開が予定されている。そのため、農業者や農業者と協力する企業などが利用できる制度について、普及推進を徹底すること。
(7)農業者向け事業のPRの充実
県において事業PRをホームページ(生産者の皆様向けの事業)に掲載しているが、事業概要のみで、申請先や実際の事務手続き、対象者の要件などが確認できないものが多い。より農業者にもっとわかりやすい資料を提供すること。
(8)税制特例の事務負担軽減措置
昨年改正された軽油免税の事務手続きについては多くの利用者にメリットがある改正となった。しかし、一定量を超える消費を行う経営体は事務の軽減の対象となっていない。今後、集積・集約を行い、大規模化を進めるにあたり、経営規模が拡大した経営体においては、利用する軽油の量は多くなるため、現在の事務軽減対象から外れると大規模化のメリットが損なわれる可能性があるため、大容量を利用する農業者についても事務の軽減措置が受けられるように措置すること。
(9)資材高騰等への支援措置の恒久化
資材高騰による経営体への支援については、その都度、緊急対策を講じるのではなく、恒久的な措置を講じるように国に要請するとともに、県として対応を検討すること。
(10)農業経営内容を踏まえた価格形成
現在、持続可能な食料供給の実現に向けて、フードチェーンの各段階でのコストを把握、共有し、生産から消費に至る食料システム全体で適正取引が推進される仕組みの構成が国において進められているが、農業経営を継続できるよう、再生産に配慮した適正な価格形成・取引を推進するための仕組みの早期構築を国に要請すること。
(11)農産物の生産過程におけるコスト低減活動への支援強化
肥料・農薬の削減などは、今後の環境と調和のとれた農業生産の確立のためには重要な目的となっている。しかし、ただ削減を行うことや、何も考えずたい肥などを施用することは、品質や生産量に影響し、環境にも悪影響を及ぼすこととなる。重要なことはどの成分がどれだけ不足しているのかを適格に判断し、必要なものを必要な量施用することである。このため精密な土壌分析等を実施できる体制づくりやそのコストへの支援対策を構築すること。
(12)環境保全型農業直接支払交付金の対象農地の拡充
みどりの食料システム戦略における環境対策を推進するためには、基本的な取組となる環境保全型農業直接支払交付金の対象農地について、都市計画や農業振興地域制度に関らず全農地とする。また、個人で事業を実施する場合について、集落の耕地面積の一定割合以上の農地において対象活動を行うことの面積要件を緩和させるよう国に要請すること。
(13)環境負荷軽減を行う営農への新たな交付金の創設
経営体において、客観的に判断できる環境負荷低減がされた営農を行う場合に、実施経営体に対する助成措置を国に要請すること。
(14)新たな多様な労働力の確保のための支援
国においては、県域をまたいだ支援として、産地間において、余剰人員を派遣する仕組みやコロナ化で行われていた他業種の人員を農繁期の作業員として派遣する仕組みなども行われてきた。そこで、そのような取組を発展させ、例えば、農業側の短時間労働のニーズの把握とその情報の他産業への提供など、副業として農業を行うものを確保するための支援を行うこと。
(15)新規就農者を育成する法人への支援
新たな担い手を育成する手段として、農業法人に就職後、独立する仕組みは、農作業・農業経営などを実践的に学べる機会であり、その後の販路の相談等にも協力体制の構築ができるなどのメリットがある。そこで、就農支援などを協力する法人について、一定基準の経営体を就農支援法人として位置づけ、その法人が行う従業員の独立支援に対して助成措置を講じること。
(16)営農の行程にあった用水の供給確保
大規模稲作経営者においては、労働力や機械、施設の稼働時間の平準化を図るため、従来より作付期間が長期化している。このため取水に関して、水が必要な時期に供給されないという問題が生じている。そのため水の利用期間について、大規模経営体の営農体系にあった利用が可能となるように検討を行うとともに、必要に応じた河川からの取水できるように国に要請すること。
4 農業振興のための地域施策と県民の理解促進
(1)鳥獣害対策の予算の利用促進
鳥獣被害については、中山間部のみならず都市部においても広がっている。そのため、国の予算措置の活用方法を市町村がしっかり理解し、必要な措置と支援を活用できる体制を構築することが対策として重要である。そこで、予算の仕組みや助成内容、対象要件などの理解促進を行うための支援を強化すること。
(2)県民の農業理解の促進
県の目指す農業の在り方や、農産物生産現場の現状について、県民にも深く理解してもらうことは、本県農業の全体像の理解を促し、地域社会と農業の共生、ひいては県内農産物の販売促進にもつながるきわめて重要な事項である。そこで県として、本県農業に対する県民理解促進のための活動を強化すること。
(3)食農教育の推進
「食」の大切さを伝える食育の一環として農業体験や食農教育を支援し、児童生徒に農業の理解促進を図ること。

さいたま市浦和区高砂3-12-9 県農林会館内
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